「相続」と一口に言っても、プラスのものばかりではなくマイナスのものもあります。
住宅ローンもそのひとつです。
この記事では、不動産相続したときにローン残債があったときはどうなるのか、団体信用生命保険ありとなしのそれぞれのケースについて解説します。
あわせて住宅ローンの相続を回避する方法はあるのかも紹介していきます。
Contents
団体信用生命保険ありのローン残債がある不動産相続
親が亡くなり、不動産相続したものの、まだローン残債があったというケースは珍しいことではありません。
ここではまず、住宅ローン契約時に団体信用生命保険に加入していた場合どうなるのかを解説します。
そもそも団体信用生命保険とは?
団体信用生命保険とは、住宅ローンの債務者が加入できる保険です。
ローン返済中に死亡、あるいは高度機能障がいとなったときなどに適用され、保険金でローン残債が完済されます。
完済されたあとは、ローンの返済は不要になるため遺族に負担がかかりません。
現在多くの金融機関が、住宅ローンを組むときに団体信用生命保険の申し込みを条件としています。
金融機関に必要書類を提出してローンを完済する
不動産相続した際、団体信用生命保険ありだった場合には、手続きをすることで住宅ローンが保険金により完済される可能性が高いでしょう。
まずは住宅ローンを契約している金融機関で必要書類を受け取り、書類を提出します。
必要になる書類は、死亡時と高度障がいを負った場合で異なる点には注意が必要です。
保険金支払いの可否が決まるまでには1カ月以上の時間がかかる場合がありますが、保険金の支払いが確定するまでの返済は、相続人が行います。
抵当権抹消手続きをする
保険金の支払いが確定したら、抵当権抹消手続きに進みます。
抵当権とは、住宅ローンの支払いができなくなったときに、金融機関が該当不動産を競売にかけるなどして処分し、残債を回収する権利のことです。
相続した不動産が団体信用生命保険ありでローン残債を完済できたら、抹消登記をする必要があります。
抵当権を抹消しなければ、実際にはその権利は消滅していても、書類上は借金がなくなったとはされません。
今後不動産を売却するときなどにトラブルになる可能性があるため、早めに手続きしておくことがおすすめです。
保険金は金融機関が受け取る
団体信用生命保険ありだった場合、保険金を受け取るのは住宅ローンを借り入れしていた金融機関です。
団体信用生命保険の保険金は、相続財産には該当しないため、相続人の相続税が増えるなどの心配は不要です。
団体信用生命保険なしのローン残債がある不動産相続
それではローン残債ありの不動産相続したときに、団体信用生命保険なしであることが判明したときにはどうすればいいのでしょうか。
ローンの残債は相続人が支払う
ローン残債があるのに、団体信用生命保険なしであった場合には、住宅ローンは相続の対象となるため不動産を相続した人がローン残債を支払う必要があります。
相続人が複数いる場合には、相続人の1人が債務を相続し、抵当権を変更します。
もしくは相続人全員がとりあえず債務者となり、そのあとほかの相続人の債務を引き取る形で抵当権を変更することも可能です。
いずれかでローンの債務者を1人にし、完済するまで返済を続けていきます。
ほかの生命保険金を残債の支払いにあてる
団体信用生命保険なしであった場合でも、ほかの生命保険に加入していることもあります。
そういったケースでは、ほかの生命保険からおりた保険金を利用して、住宅ローンを完済することも可能です。
その場合、住宅ローンは債務控除の対象となります。
債務控除とはプラスの遺産からマイナスの負債を差し引き、相続税の負担を減らすことを指します。
相続人が連帯保証人になっているなら返済義務はなくならない
不動産相続で、相続人が住宅ローンの連帯保証人となっている場合は、相続を放棄したとしても返済義務は残ります。
返済を続けていくか、返済ができないのであれば自己破産をするなどを検討することになるでしょう。
ローン残債がある不動産相続を回避する方法
不動産相続で住宅ローンに残債があるとわかったときに、ローンの支払いを回避する方法を4つ紹介します。
団体信用保険を適用させる
不動産相続時には、まずは団体信用生命保険に加入していないかを確認しましょう。
団体信用生命保険に加入しているなら、適用を申請することでローンを完済できる可能性が高くなります。
ただ、加入していた場合でも、被相続人が死亡したからといって自動的に適用されることはない点には注意が必要です。
ローンを契約している金融機関に連絡し、必要書類を用意したうえで手続きするようにしましょう。
生前に借金を整理してもらう
団体信用生命保険なしでローン残債のある不動産相続を回避したいときには、あらかじめローンを整理しておいてもらうことも考えましょう。
方法としてまず考えられるのが「任意整理」です。
任意整理とは、利息分をなかったこととして、元金のみの返済にしてもらう事を指します。
利息の支払いが不要になり、元金のみの返済となるので、早くローンを返済できるようになることがメリットです。
ただし任意整理すると、ブラックリスト入りしてしまい、5〜7年は新たにローンを組んだり、クレジットカードを作ったりできなくなります。
住宅ローンの残債が巨額で返済の目処が立たないようなケースでは、個人破産する以外にない場合もあるでしょう。
個人破産するとすべての債務から解放されますが、任意整理と同様にブラックリストに載ることは避けられません。
なお、個人破産の手続き自体を専門家に依頼した場合には、50万円程度の費用がかかることもあります。
相続放棄する
不動産相続時における住宅ローン残債については、相続放棄することで負担を回避することが可能です。
ただし、「現金は相続するけれども住宅ローンだけ相続放棄する」といったことはできません。
相続放棄は、遺産ごとに相続する・しないを選ぶことはできないのです。
そのため相続放棄は、プラスの遺産とマイナスの遺産を通算し、結果的にマイナスになる場合に選択されることがほとんどです。
相続放棄を希望するときには、相続人になると確定した日から3カ月以内に、被相続人が住んでいた地域の家庭裁判所に申請する必要があります。
限定承認する
プラスの遺産とマイナスの遺産があるときには、限定承認することも可能です。
限定承認とは、財産のすべてをいったん相続したうえで、プラスの遺産を使ってマイナスの遺産を支払う方法を指します。
たとえばローン残債はあるけれども、それを上回る現金遺産があるといったときに、ローン残債を現金遺産で返済し、残った現金遺産を相続する方法です。
限定承認するときにも、相続放棄と同様に、相続人になるとわかってから3カ月以内に、被相続人が住んでいた地域の家庭裁判所に申請が必要です。
まとめ
住宅ローンが完済していない不動産相続について、団体信用生命保険ありとなしの両方のケースを紹介してきました。
近年住宅ローンを契約するときには、団体信用生命保険の申し込みが必須とされることがほとんどであるため、今後ローン残債のある不動産相続は減少していくとみられています。
万一団体信用生命保険なしでローン残債のある不動産相続をすることになったときには、回避の方法を考える前に、ほかに生命保険に加入していないか、プラスの資産がいくらあるのかなどを、まずはよく調べることが大切です。
そのため可能な限り現金でまかない、どうしても足りないぶんをローンでカバーするのがおすすめです。
借り入れ金額や返済年数によっては利子の返済割合が多くなり、収益性の悪化が懸念されます。
アパートローンを利用する際は、綿密な返済計画を練るとともに、頭金をしっかり貯めておくのが得策です。