手持ちの資産を最大限活かしたい、相続税対策をしたいといった理由から、アパート経営を視野に入れている方も少なくありません。
しかし、アパート経営は収益化の仕組みをしっかり理解したうえで取り組まなければ、失敗する可能性が高くなります。
今回の記事では、インカムゲインとキャピタルゲインの違いや利回りなど、アパート経営で収益を生み出す仕組みの基本と、アパート経営が相続税対策となる理由を解説します。
Contents
アパート経営で収益を出そう!①インカムゲインとキャピタルゲインの仕組み
アパート経営で収益を出すことを考えるためには、そもそも不動産投資とはどのような仕組みになっているのかを知っておく必要があります。
不動産投資で収益を生み出す仕組みには、以下の2種類があります。
- インカムゲイン
- キャピタルゲイン
この2つがどう違うのかをまずは確認しておきましょう。
インカムゲインとは
インカムゲインとは、資産を保有することで収益を得ることを意味します。
不動産投資においては、アパートや区分マンションを購入して人に貸すことで、家賃収入を得る仕組みです。
収入を得るための収益物件を購入するにはローンを組むのが一般的ですが、ローンの返済に家賃収入を充てられることがインカムゲインのポイントです。
ローンを完済してしまえば家賃がそのまま収入となりますが、修繕積立費や管理費などのコストは発生し続けます。
キャピタルゲインとは
キャピタルゲインとは、資産を売買することにより収益を得ることを意味します。
不動産投資においては、区分マンションなどを購入し、購入価格よりも高い価格で売却することで収益をあげる仕組みです。
地価が上がり続けていたバブル時期の不動産投資は、キャピタルゲインを目的とするのが主流でした。
しかし、バブルが崩壊したあとは、都心などの一部を除いて購入したときよりも高値での売却が困難になっています。
そのためリスクを避けたい投資家は、アパート経営などのインカムゲインによる不動産投資への移行が進んでいます。
アパート経営は自己資金が多い人が有利
アパート経営では、自己資金が多い人が有利になります。
アパート経営においては、多くの人は所得がどれくらいになるのかを気にしますが、経営において重視するのは、最終的に手元に残る現金であるキャッシュフローです。
所得とキャッシュフローの違いを、計算式から確認してみましょう。
- 所得=家賃収入−(経費+借入金利子+減価償却費)
- キャッシュフロー=家賃収入−(経費+借入金返済費+税金)
上記を見ればわかるように、所得が黒字で収益があってもキャッシュフローが赤字になることは十分あり得ます。
キャッシュフローは借入金返済費がどれくらいになるかが大きく左右するため、アパート資金は自己資金が多く、借入金が少なくてすむ人が有利になる仕組みなのです。
アパート経営で収益を出そう!②利回りの仕組み
アパート経営をするうえで、次に知っておくべきなのが利回りの仕組みです。
利回りとはアパート経営をすることで得られる収入の割合を指し、以下の2種類があります。
- 表面利回り
- 実質利回り
それぞれの仕組みと違いを理解しておきましょう。
表面利回りとは
表面利回りとは、アパートを購入するときにかかった費用を、1年間で何%回収できるかの目安とする数字で、以下のようにして算出します。
表面利回り=年間の家賃収入÷物件価格×100(%)
表面利回りは、10%以上を目安とするようにしましょう。
実質利回りとは
実質利回りとは、アパート経営をしていくのにかかる費用を差し引いた家賃収入をもとにして、物件購入の費用が何%回収できるかを表した数字で、以下のように計算します。
実質利回り=(年間の家賃収入ー年間経費)÷物件価格×100(%)
実質利回りは、年間経費を家賃収入の15〜20%とすることで、おおよその額を計算できます。
実質利回りは、5%を超えていれば理想的ですが、3%を最低ラインと考えておくのが現実的です。
利回りを考えるときの注意点
利回りを計算するときの家賃収入は、「物件購入時点の満室時の家賃収入」であることには注意が必要です。
実際にアパート経営を始めると、空室が出ることもありますし、築年数が古くなれば家賃を下げることも考えられます。
利回りは、あくまで計算上の最高額であることを念頭に置くようにしましょう。
アパート経営で収益を出そう!③相続税対策となる仕組み
アパート経営が相続対策になると聞き、検討している方もいるのではないでしょうか。
ここからは、アパート経営が相続対策になる仕組みと、アパート経営で節税できるのはどんな人なのかを解説します。
アパート経営が相続税対策になる仕組み
アパート経営が相続税対策になるといわれているのは、以下の3つの効果が期待されるためです。
- 土地建物は現金と比べて評価額が低い
- 「小規模用住宅地の減額の特例」が受けられる
- ローンを組むことで債務控除が適用される
順番に解説していきます。
土地建物は現金と比べて評価額が低い
アパート経営が相続税対策となるのは、土地建物は現金と比べて評価額が低くなるためです。
相続税額を計算する資産のうち、当然ながら現金は額面通り、100%で評価されます。
対して土地については国が定める路線価をもとにして算出され、路線価から2割低く評価されます。
建物に対しては、固定資産税評価額をもとに算出しますが、3〜4割程度差し引かれて評価されることがポイントです。
つまり土地建物を活用するアパート経営をすることは、現金による相続よりも、相続税を大きく節税できるのです。
「小規模用住宅地等の特例」が受けられる
アパート経営が相続税対策になるのは、小規模用住宅地等の特例が受けられることも理由です。
小規模用住宅地等の特例とは、亡くなった人が居住していた土地や、事業に使っていた土地については、要件を満たせば80%または50%も評価額を減らせる特例のことです。
小規模用住宅などの特例を受けるためには、被相続人と相続人が生計を同じくしていた親族である、土地の上に建物が建っているなど、いくつかの条件を満たさなければなりません。
小規模用住宅地等の特例は、用途によって適用される最大面積や割合が違ってくるので、事前によく確認するようにしましょう。
ローンを組むことで債務控除が適用される
アパート経営をするときにはローンを組むことが一般的ですが、借入をすることで債務控除が適用されることも、相続税対策になります。
債務控除とは、相続税額を決めるときに、プラスの資産からマイナスの資産を差し引くことを意味します。
借入金はマイナス資産であるため、相続の対象となる資産から差し引かれて計算され、結果的に節税につながる仕組みです。
まとめ
不動産投資の基礎知識から、アパート経営が収益を生み出す仕組みや相続税対策になる理由まで紹介してきました。
アパート経営は、自分自身の資産を運用することで収益を生み、さらに資産を増やすことが可能です。
また、多くの資産を抱えている場合には、現金のまま相続するよりも、アパートという「土地建物」にしてしまったほうが、相続税額を低く抑えることにもつながります。
アパート経営はあくまでも「事業」であることを認識し、相続税対策のみでアパート経営をするのではなく、経営に力をいれればさらに資産を増やしていけるでしょう。